貴金属は質屋にとって重要な商材=質草です。時計や指輪、ネックレスなどの素材にも使用されているので、貴金属を目にしない日がないといってもいいでしょう。ですから、素材の基礎知識は質屋にとって必須となっています。 しかし、一般消費者のみなさまにとっては分かりにくいようで、いろいろと勘違い、誤解なさっている方も少なくありません。そこで、今回は主な貴金属の種類について紹介していきます。
世の中にはさまざまな金属があります。鉄、亜鉛、アルミニウム、錫、銅、金、銀、プラチナ、ステンレス、チタン、など例を挙げればきりがありませんが、これらのなかでも特に産出が少なく、腐食の少ない8種類の金属を貴金属と呼びます。金、プラチナ(白金)、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウムがそれにあたります。
このうち質屋が主に扱う貴金属は、金、プラチナです。理由はいくつかありますが、1グラム単位での単価が高価であることが理由のひとつです。また、金、プラチナはジュエリー(宝飾品)や腕時計の素材に用いられていることが多いのも理由です。貴金属で作られたジュエリーは、専門の職人がピカピカに磨くと新品と区別がつかないくらい綺麗になります。記念のお品は新品をご購入いただき、自分へのご褒美の品は、お近くの質屋にて、同じご予算で数ランク上のお品をゲットして頂くのも賢いお買い物術ではないでしょうか。
少し脱線をしてしまいましたので、話を戻しましょう。ジュエリーを作る場合、一般的には純金は用いず、他の金属を混ぜて(割金といいます)純度を低くした18金や14金などを使います。別にケチって、金の純度を低くしているわけではありません。純金(24金)は柔らかく、変形しやすいため、宝飾品に加工する際に割金をして硬度を高めるのです。さすがに金の延べ棒は素手では曲げられませんが、指輪程度の厚さならば素手で変形させることが可能です。もし、純金を使ってダイヤモンドのリングを作ったとします。柔らか過ぎるため、リングをぶつけたり、衣服にリングの爪が引っ掛かるだけで変形してしまいますので、ダイヤが落っこちてしまう危険性が高くなります。つまり、純金のままだと製品としての耐久性に問題があるため、敢えて割金をして純度を落とし、硬くしているのです。
一般的なジュエリーに使用される18金というのは、75%の純金に25%の他の金属を混ぜて作られています。金の純度が75%なのに、どうして18金というのでしょうか。不思議ですよね。 日本では純金のことを24金といいます。この24の75%は18ですよね。だから純度75%の金を18金と呼びぶのです。この場合、ジュエリーには「K18」等と刻印されます。欧米では1000分の750を意味する「750」と刻印されます。 この25%の部分を、銀で割るとイエローゴールド、銅で割るとピンクゴールド、パラジウムで割るとホワイトゴールドとなります。実際には様々な金属を含有して割り微妙な色合いを出します。また、ホワイトゴールドには、より耐久性と艶を持たせる為にロジウムメッキが施されています。
左から、ホワイトゴールド、イエローゴールド、ピンクゴールドのペンダント。)と ちなみに、プラチナは10%または15%の割金を施すことが多く、「Pt900」(1000分の900)、「Pt850」(1000分の850)等と刻印されます。
腐食しにくい金やプラチナは、ジュエリー以外にも様々な用途に使われています。ご存じのように、純金や純プラチナのインゴット(延べ棒等)の形で世界共通通貨として用いられています。これ以外にも、金は熱伝導率が高いため、CPUやLSIなど電子機器のパーツにも使われています。また、展性に優れ、非常によく伸びるという特性を持ちます。この性質を利用して、約2グラムの金を畳1枚分にまで伸ばせば、厚さ約1万分の1ミリの金箔を作ることもできます。金箔を貼り付けたものを金張りといいますが、同じように金はメッキ(金属などの材料の表面に、金属の薄膜を被覆する表面処理)することもできます。金は酸化・腐食しにくいことから人工衛星の表面にも金メッキが施されています。プラチナは、プラチナ製剤といわれる抗癌剤など医療分野でも活躍していますし、自動車の触媒などにも使われています。このように産出が少なく幅広い需要があるのも高値の理由です。
ここ数年で金・プラチナの相場が高騰しているため、宝飾品の製造コストも急上昇しました。一般的に宝飾品には18金やPt900、Pt850が用いられますが、販売価格が高額になるため、10金や9金など純度を落としたものや、今まで工業用に使われていた、あまり高価でない金属を使ったアクセサリーも増えてきました。ステンレスやタングステン、チタンなどで作られた金属のみのデザインで楽しむというものです。珍しいところでは、ステンレスとプラチナを使用した物もあります。10金や9金はその純度に応じて買取可能ですが、ステンレスやタングステンのアクセサリーは値段がつかないことがほとんどです。
(金箔で装飾された金閣寺。)
(プラチナとステンレスで作られた指輪。)
金、プラチナ、ステンレス、チタンなど地金等の種類について